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弁護士ブログ

「モンテ・クリスト伯-原案、翻案、著作権」

2018.06.13|甲斐野 正行

 今、フジテレビ系で、ディーン・フジオカさん主演による「モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-」が放映されており、いよいよ最終回を迎えるところですが、ネット上の評価はいろいろあるようですね。

 「三銃士」と並ぶ、大デュマの古典的名作であり、いまだに世界中のクリエイターを刺激するようで、これまで映画・舞台・TVドラマ・アニメやマンガ等で繰り返し翻案されてきました。

 私も、小さい頃から大デュマの作品が好きで、特に「モンテ・クリスト伯」関係のものは、岩波版の原作(山内義雄訳)から、宝塚の舞台、アニメの「巌窟王」まで読んだり見たりしてきました。しかし、この作品は、原作が長編であることもあって、尺の短いドラマや舞台での翻案で成功したといえるものは残念ながら少ないと思います。

 翻案とは、既存の著作物に基づいて、それと基本的な同一性は維持しつつ、具体的な表現形式を変更して新たな著作物を創作する行為で、小説をゲーム化したり映画や芝居にしたりというのが典型です。

 「-華麗なる復讐-」は、脱獄後の主人公の容貌が昔のままなのに、何故敵役や関係者は気づかないのか?という触れてはいけない点はおいといて、なまじ現代の日本に置き換えてしまったために、特に敵役が貧乏くさく、しょぼいものになってしまっています。しかも、重要な登場人物(原作のアルベール=メルセデスとモルセール伯の子に相当する人物)や道具立て(例えば、メルセデスにモルセール伯の裏切りを証明するための重要文書)を変更し端折ったために、展開の盛り上がりや登場人物の行動の納得性に支障を来しているように感じます(このドラマのファンの人にはゴメンナサイ)。

 宝塚の舞台(2013年 宙組)は、アルベールが実はメルセデスとエドモン・ダンテス=モンテ・クリスト伯の子だったという設定の点でフランスのTVドラマ(1998年 ジェラール・ドパルデュー主演)を下敷きにしたとおぼしき脚本でしたが、メルセデスがアルベールとモンテ・クリスト伯の決闘を止めるために、自分がモンテ・クリスト伯と斬り合うという特異な脚色をしました。アルベールがエドモンの子なら、メルセデスがエドモンにそれを打ち明ければ足り、命をかけて斬り合う必要はないはずで、メルセデスを演じた実咲凛音さんは役作りの上で当惑していたように思われます。

 大デュマが生きていたら、こうした翻案を許したかは興味深いところです。もちろん原作の「モンテ・クリスト伯」は大デュマが1870年になくなって既に150年近く経過しており、50年の日本はもとより、最も長いと思われるメキシコ(100年)でも、その著作権保護期間は経過していますので、これをどう翻案するかは自由ですが、なまじよく知られていて、手垢もついている分、翻案はハードルが高くなります。

 

 ところで、大デュマは多作であり、そのために執筆協力者を何人か抱えていたのですが、その一人から、盗作だと裁判に訴えられたというのは有名な話です。その盗作と訴えられた作品には「モンテ・クリスト伯」も含まれていたようです。おそらく、いわゆる工房的なやり方で執筆しており、執筆協力者の立場は、現代で言えば、取材原案協力とか共作者というものではなかったかと思われますが、出版社の都合で大デュマの名前でないと売れないことから、大デュマ単独名義にされたようです。

 もっとも、取材原案協力をしてもらっても、大デュマがこれを料理することで名作になったことは明らかで、大デュマこそ翻案力が傑出していたといえるかもしれません。大デュマが「盗作したことは認める。しかし、俺の方が面白い。」と言った、というパロディがいかにも大デュマが実際に言ったセリフかのように誤解されているのも、そうした共通認識があるからでしょう。

 

 さて、それはおいておいて、原案協力の場合、その著作権関係はどうなるのか?

 ともすれば、原案協力の場合は、著作権は発生しないという誤解もあるようですが、これはその原案の内容や協力の程度との兼ね合いで、著作権として保護に値しない場合もあれば、著作権として保護すべき場合もあるというところです。

 大デュマの執筆協力者がどの程度の貢献をしていたのかが明確ではありませんし、当時のフランスの著作権についての考え方も判りませんが、裁判所の判決では、大デュマに対し18作品について印税の25%を執筆協力者に支払うよう命じられたものの、著作権は執筆協力者には認められず、著作者として表記されることにもならなかったようです。

 現代の日本での工房的な作り方といえば、さいとう・たかを/さいとう・プロダクションの「ゴルゴ13」が有名ですが、これには各話毎に脚本又は原案協力者、作画スタッフ、更に担当編集者の名前もクレジットされていて、その権利関係を対外的に明確にしています。

 マンガの場合は工房的な要素が強かったり、アイデアやストーリーに複数の人の貢献がある場合もありますので、権利関係についてのしっかりした考え方や体制をとるのが望ましいのですが、なかなか、さいとう・プロダクションのような割り切ったやり方は個々の現場では難しいようで、深刻なトラブルもよくあります。

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