高次脳機能障害

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 「交通事故など各種被害者損害賠償請求」の稿でも述べていますが、私たちは、これまで高次脳機能障害をはじめとして、CRPS(RSD)、外傷性神経症などの難しい後遺症を取り扱ってきました。
 そのなかで高次脳機能障害というのは、いろいろな捉え方がありますが、簡単にいうと、事故などによって、脳内に目に見えないけれども小さな傷が残ってしまい、それまでの被害者とは何かが違った状態になったときのその障害のことをいいます。
 例えば、事故によって頭部を打ったり、麻酔や溺水によって脳に酸素がいきわたらなくなったりした後、記憶能力が低下したり(記憶障害)、うっかりミスが多くなったり(注意障害)、仕事の段取りができなくなったりすること(遂行記憶障害)があります。また、人格的には、それまで穏やかだった人が怒りっぽっくなったり、逆にそれまで非常に活発だった人が引きこもりになったりすることもあります(人格変化)。しかも自分に自覚がなかったり、あるいは事実を認めたがらないため(認知障害)、病院に行ってもらうことも苦労することもあります。
 ふつう事故にあった場合、最初は命を取り留めたことで家族もほっとし、病院を退院します。そして退院から時間があまりたっていない段階では、元の被害者とは何かが違っても、事故のショックが残っているくらいにとらえて、そのうち治るだろうと考えます。
 しかし職場や学校に復帰して時間がたっても元のようにならず、むしろ前にできていたことができなくなったことにショックを受けてしまいます。  ただし、ちょっとした会話や単純な作業が短時間ならできることも多いことから、その人と長時間一緒にいる人でないと、その異常には気づきません。
 高次脳機能障害の患者の人はこのようなケースが多いのです。
 ところが、このような症状が出ている患者が、必ず、高次脳機能障害として認定されるかというとそうではありません。  高次脳機能障害の認定は、お医者さんによっても緩いものから厳しいものまでいろいろあるようです。しかし、少なくとも現時点で、自賠責保険などで高次脳機能障害と認められるためには、ここに述べたような、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、人格変化、認知障害などが認められるだけでは不十分であり、そのほかに、医証(医療上の証拠)からみて

(1) 事故当初に、重症の意識障害が6時間以上続くか、もしくは軽症の意識障害(例えば、意識はあるがいまひとつはっきりしない状態)が1週間程度続くこと(高齢者などではこの期間が短くてもよい)

(2) 事故から落ち着いた時点(慢性期)で、脳の画面上、脳萎縮(脳が縮むこと)が認められるか、もしくは事故から間もない時期(急性期)に、脳内の点状出血やくも膜下出血などの脳内の異常所見がみられること

が必要とされるのが通常です。
 実は、医師の中にも、(1)や(2)の所見がみられなくても、高次脳機能障害の患者は明らかにいるという方も少なからずあり私たちもそう思っていますし、これらがなくても高次脳機能障害の疑いが強いとして損害を認定した高裁判例もあります。しかしそうした事案が通常より認定が難しい事案であることは確かです。
 ところで、事故後の治療にあたった医師が、高次脳機能障害の証明や認定にあたって、何を記録すべきか理解してくれる人であれば問題ないのですが、残念ながら、そのような人ばかりではありません。
 例えば、重度の意識障害は誰でも書いてくれるでしょうが、軽症の意識障害は、よほど意識してくれない限りカルテに記録されにくいのではないでしょうか。
 また、お医者さんに聞きますと、脳内の点状出血なども、機材の性能の問題もあるようですが、エックス線で写すCTには写らなくても磁力で写すMRIでは写るということもあるようです。しかし、MRIのほうが費用も高いこともあって、当初の意識障害が大したものでなければ、MRIまでは調べないことも多いようです。
 ところが、実際には、当初の意識障害は大したことはなく、またCTでも異常がみられないのに、明らかに高次脳機能障害の症状が発生しているケースは私たちの経験でも数多く存在します。
 それなのに、あとから写真を撮り直しても、その時点では点状出血などは確認できなかったりすれば、実際には高次脳機能障害と思われるのにその認定がされにくくなります。また、当初の担当医師が、軽症の意識障害を重視せず、記録し忘れても認定が難しくなります。

 私たちは、このような事態ができるだけなくなるように、被害者の会の人達と一緒に高次脳機能障害の問題に取り組んできました。また、裁判の場で正当な補償を求めるだけでなく、補償以外の福祉の拡充のために、裁判所、行政機関、病院その他の関係各機関に保護や理解の拡大を求めてきました。  その蓄積されたノウハウをもって、今後も高次脳機能障害で苦しむ人たちのため、がんばりたいと思っております。

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