トラ【No.2】
2017.05.08|中井 克洋
トラはとても健康で、うちに来てから14年経ったが目立った病気をしたことがなかった。私たち夫婦が旅行に行ったりして家を空ける時には、実家などでトラを預かってもらっていたが、家に連れて帰ってもそれほど変わったことはなかった。
ところが昨年平成28年(2016年)の夏に預けて家に連れて帰ると明らかにトラの調子が悪くなり、食事をしなくなった。またビニールなどを噛む癖がもともとあったが、明らかに呑み込むことさえするようになった。犬は人につき、猫は家につくというが、環境を変えることでとてもストレスが溜まり、特に年をとってから環境変化に弱くなったようだ。それ以来、夫婦で家を空けないようにして、どちらかが家で見ることにした。
年が明けてからは、時々嘔吐もするようになってきた。でも、ネコは手術などすると体力が弱るのでこのまま様子をみなければならないと思っている。
思えばトラが来てから本当に色々なことで癒されてきた。何か心配がある時には、どうしたのというような顔をしてニャーといって寄ってくる。私と妻が話をしていると必ず私たち2人の間に入ってきて「僕も入れてよ」というかのようにニャーと言って近づいて頭をこすりつけてくる。
私たち夫婦が寝ていると、頭と頭の間にちょこんと寝て気づくと川の字になっている。
「トラ」と呼ぶと自分のことがわかるようで(特に妻に対しては)必ずニャーと振り返ってくれる。家に帰ると(特に妻に対しては)玄関に迎えに出てくれる。
トラのごはんやトイレの世話をするのは妻の方が多い。最初はネコを飼うことをあれほど反対していたのに、今では妻の方がよほどネコ好きになった。夫婦で岩合さんの「世界ネコ歩き」をみるのも大好きだ。
この子がいつまでも元気でいてくれることを、本当に私たち夫婦は祈っている。
残念なことがある。
トラはどうやら妻の方が好きなようだ。
この原稿を考えながら「トラくん」と呼んだ・・・振り返ってくれない。
「トラちゃーん」・・・妻が呼ぶと振り返った。【完】