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弁護士ブログ

「お医者さんはしんどい.....(-_-;)-応召義務パート4」

2018.07.23|甲斐野 正行

  前回パート3から結構あいてしまいましたが、パート3で触れましたように、今度は入院の際の身元保証、あるいは、保証についてです。

 入院に限らず、家を借りたりする際に、身元保証人、あるいは、保証人を求められることはよくありますが、この場合の保証って何なのか、よく理解せずに使われている面があるかと思います。

 普通、誰もが思う保証というのは、例えば1000万円の融資を受ける際に、借金をする当人(主債務者といいます)が弁済できない場合に備えて、その1000万円という特定の金銭支払を主債務者に代わって、保証人がその金銭を支払うというものです。この場合は、特定の金銭支払義務について保証するものですから,金額の多寡はあるにせよ、保証人が責任を負う範囲は初めから明確です。

 ところが、入院するときの身元保証、あるいは、保証というのは、入院する際に,その患者の身元を保証すること(患者の容態が急変し、死亡してしまった時の身元引受や、本人の判断力が不十分なときに治療行為の説明を受け同意をすることなども含むことがあります)に加えて,その患者が今後の治療において病院に対する支払うべき医療費等を支払わなかったり、何らかの損害を与えた場合,その賠償責任をその患者と共に負担するものです。

 そして、問題なのは、その患者が将来どれくらい医療費等を溜めたりして、どれだけの債務や損害を発生させるかは身元保証人には予測できないことです。ともすれば、身元保証人は気軽になってしまいがちですが、まかりまちがうと思いもしなかった額の支払を求められるということもあり得るわけです。これは、家を借りるときの保証人も同じ問題があります。

 このような、債務額が将来いくらになるか不確定なまま取引をする場合の保証を、「根保証」といいます。

 病院(個人の医院も含む)の医療費(の自己負担分)は、一回一回の額はさほど大きな額にはならないことが多いのですが、それでも支払わない人が多いのが実情です。

 では、医療費を支払わない人の診療はしなければよいではないか、というと、そうは簡単にはいきません。日本では、パート1~3で触れました医師の応召義務があります。また、応召義務以前に、病んだ人が目の前で治療を求めているのにこれを拒絶するのは、多くの医師にとって、心情的におよそ困難でしょう。

 医療費を支払わずにたくさん溜めている不心得な患者からでも治療を求められれば、病院(医師)としてはこれを拒絶することはせず、治療に応じているのが通常です。しかし、そういう不心得な人はその後もやはり医療費を支払わないことが多く、こうした積み重ねで医療費の不払いが嵩み、病院経営を圧迫する深刻な問題となっています。

 ちなみに、生活保護を受けている方の場合は、医療扶助が出ますから、差額ベッド代など医療扶助の範囲を超えない限り、逆に医療費不払いの問題は起きません。むしろ相応の所得や財産がある人で、こうした医療費不払いを起こしている悪質な人も相当数いるわけです。

 そういう意味では、医療費の安定的な回収は、病院が安定的に医療を提供するための前提となるわけで、保証人を求めるのも理由がないわけではないといえます。

 

 とはいえ、個人根保証(不特定債務について個人が保証人となる保証)一般の問題として考えると、最終的な債務額がどれくらいになるかわからず、また、その責任がいつまで続くのか判らないというのは、個人の根保証人に過大な負担を強いることになって気の毒です。

 そこで、平成29年の民法(債権法)改正では、個人根保証は、

① 根保証人が責任を負う最大額(極度額といいます。)を定め、かつ書面又は電磁的記録で契約されなければ無効となること、

② 個人根保証の保証人が保証する具体的な債務元本額は、保証人への差押、保証人の破産、主債務者又は保証人の死亡のいずれかがあった場合に確定(つまり、その時点で保証が打ち切られ、その後に発生した債務は保証されません。)すること、

などが定められました。

 これにより、根保証人は、予め責任を負う最大限を覚悟して保証契約をするができることになるわけですが、理屈はそうでも、この最大限の額=極度額をどう定めるかは、結構悩ましい問題です。

 極度額自体の上限額が法律で決められたわけではなく、あくまで当事者間の合意によることになりますから、いわゆる力関係で決まる部分も残ります。

 とはいえ、債権者側も、あまり無理な額を求めても、かえって保証人のなり手がいなくなってしまいますし、病院など債権者の業種によっては「強欲」・「阿漕」という風評が立つのは好ましくないという問題があるでしょう。

 また、この極度額の定めは、債権者側に債権管理をきちんとすることを求めるという意味もあります。債務が溜まることを傍観放置したあげく、その尻ぬぐいを一方的に保証人に求めるのは問題があるわけで、適切な極度額の定めは、債権管理による債務額の適切な枠組みの見込みであり、債権者として、どういう見込みで極度額を見込んで、どこでその取引を仕切るのか、が問われるといえます。

 家の賃貸借では、専門の保証会社の場合、敷金+保証支払限度額(極度額)=家賃の12ヶ月~18ヶ月程度に設定することを推奨する例もあるようですが、病院の場合どうでしょうか?

 医療は不確定な事情が多く、定額の家賃的なものが必ずしもありませんし、入院が予想外に長期化したり、高度治療で費用が予想外に嵩んだりということもあるでしょうから、一概に何かの何ヶ月分というような定め方は困難かもしれません。

 これはケースバイケースで、その案件での一定の見込額を極度額とするしかないかもしれません。これは医療界全体で知恵を絞る必要があります。

                                                                      以 上

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