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弁護士ブログ

「僧衣での自動車運転3~衣服規制削除」

2019.03.08|甲斐野 正行

福井市で昨年9月、僧衣を着て車を運転した男性に対し、警察官が、操作に支障があるとして交通反則切符(青切符)を切ったが、結局、福井県警は今年1月26日、「違反事実が確認できなかった」として検察庁に送致しない方針を明らかにした事件。

昨日(3月7日)の報道によると、福井県警は、福井県道路交通法施行細則の服装規定を削除すると発表したとのこと。

 

 同細則には運転者が守るべき事項として「げた、スリッパその他運転操作に支障を及ぼす恐れのある履物または衣服を着用して車両を運転しないこと」とあり、福井県公安委員会がこの中の「または衣服」という文言を削除することを決め、本年4月4日に施行するそうです。

 

 先のブログで予想したとおりの展開ですが、まだ問題はあります。

 「履物」についての規制は残っています。履物については、「げた、スリッパなど」という例示が一応されているので、明確性の原則に真正面から違反するわけではないというふうにも思えますし、少なくとも履物については、福井県に限らず、ほとんどの都道府県で同様の規制がされています。

 ただ、僧衣での運転の摘発の際に、お坊さん達が、動画やテレビ取材で運転に支障がないと主張していたのは、僧衣だけではなく、草履・雪駄も含めてであり、今回摘発されたお坊さんはどうだったのか分かりませんが、動画等で見ると、草履・雪駄を履いて運転しておられるお坊さんもおられるようです。

 履物については今回の摘発の対象となっていなかったようなので、あまり議論に上がらなかったのですが、憲法論とは別に、草履や雪駄は実際に運転に支障がない履物なのかどうかという実質論は残っているのではないでしょうか?そして、僧衣もそうですが、草履・雪駄の運転への支障については、結局、検証がされないまま、片や削除され、片や規制が残されたままになりました。

 

判例秘書で検索したところ、東京高裁昭和39年6月29日判決は、草履が新潟県道路交通法施行細則の「運転に支障を及ぼすおそれのある下駄等の履物」に該当するかどうか争われた事案で、「先ずいわゆる『履物』を考えて見るのに、例えば、靴、サンダル(被甲履物類)、下駄、ぞうり(鼻緒履物類)といわれるそれぞれの種類について見ても、その形状は勿論、資材、構造、機能等の差異からして多種多様のものがあることはいうをまたない。また、新古、使用度からすればその強弱の差甚しいものがある。すると、右細則第一六条第一項第二号の下駄以外の履物については概括的、類別的呼称、観念をもってこれに該当すや否やを決すべきでなく、個個具体的に当該車輛とその際用いられた履物について運転操作の妨げとなるかどうかを判定すべきものと当裁判所は考える。」とし、「一般的にいって、ぞうりについて検察官所論の如き属性(※ぞうりの構造が、底が比較的平らであるため、却って滑り易いことになり、また、鼻緒によって足と接着しているだけであるから、靴類に比すれば、必ずしも足に固着するとはいえず、足から脱げやすいし、急ブレーキをかける場合に鼻緒が切れるおそれもあり、かつ、爪先や緒がペダルにひっかかるおそれもあって、運転操作に際し、足から離脱したり、運転操作を誤るおそれが大きいこと)があることはその通りである。」とした上で、当該事件の草履については、ヤマハ、本田技研、ブリジストンの各技術員の鑑定で、いずれも運転に支障がないという結果だったことから、当該事件の草履は新潟県道路交通法施行細則の「運転に支障を及ぼす履物」に該当しないとして、無罪としました。

もちろん、あくまで当該事件の草履についての個別判断であり、一般的に草履という履物が「運転に支障を及ぼす履物」に該当しないというわけではないことは同判決も念押ししていますが、運転への支障についてかなり実質論に踏み込まないと、判断が難しく、下駄のような明白なもの以外は摘発も難しいかもしれません。

そうすると、火種はまだ残っていて、現場の警察官としては変に熱心だとまた割を食うおそれがないではなく、現場での規制のあり方に悩むことがありそうです。

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