先日の講演会【№1】
2016.05.24|中井 克洋
事務所の活動報告にも書いたのですが、この5月14日土曜日の午後1時半から、広島市立リハビリテーション病院で、作業療法士の方を対象とする研修会において、私と甲斐野弁護士が「高次脳機能障害者の運転再開に関する法的問題」を講演してきました。
土曜日にもかかわらず、50名以上の方が、広島だけでなく中国地方や九州各地かの病院やリハビリテーション施設から来られました。
我々弁護士は、
・病院のほうで運転再開についてGOを出したのに事故を起こした時に責任を問われるか
・逆にNOを出した時に、家族の方から運転再開が出来ないことについて何らかの追及や法的責任を問われるか
などの事前質問をいただいており、それを材料にして運転再開に関わる法的問題を説明いたしました。
今回、質問いただいた法律的な問題について明確に書いた本がなかったので、今回うちの甲斐野弁護士が緻密に検討して、とても詳細なレジュメを作りました。おそらく皆さん、いつも気になっていながらも、どこにも解説したものがなかったお話だったので、ご好評をいただいたのではないか、とひそかに自負しております。
ところで、私がとても感銘を受けたのは、リハビリに関わっておられる作業療法士の先生たちが、脳卒中や事故などによって運転が出来なくなった方の運転再開を強く望んでおられる気持ちを真摯に受け止めていたということです。
安全策をとって「やめておいたほうがいい。」というのは簡単ですが、例えば、公共交通機関も少ない地域で、車に乗る以外有効な移動手段がない方がいます。行政がタクシーチケットを配るというサービスを受けられるのであれば別ですが、そのような有効な対案もないまま、その方に、明確な根拠もなく運転再開の道をとざすのは、その地域で生きることを認めないのと同じです。また車の運転は、そのような必要性に迫られなくても、生き甲斐だという方もたくさんおられます。たとえ本当に難しくても、ばくぜんと「危ないからやめたほうがよい。」というよりも、具体的にどこが難点となっているので運転再開を勧めないのか、を説明してあげたほうが納得できるところでしょう。
(つづく)