「ヌーハラ 麺をすすらずに美味しいか-ハラスメントは難しい」
2018.01.16|甲斐野 正行
前回話題にしました立行司のセクハラに対しては、相撲協会は、3場所出場停止という懲戒処分に決めたという報道がありました。
相撲協会の懲戒処分は、除名、解雇、番付降下、出場停止、減俸、譴責(けんせき)の6種類だそうですが、その出場停止処分明け後に辞職を予定しているようです。
この場合、退職金は支給されます(除名は不支給)が、これが番付降下であれば、退職金の算定基礎となる報酬額が下がるでしょうから、相撲協会も、番付降下にまではせずに出場停止にとどめて、退職金に配慮を示したというところかもしれません。
ところで、今回のケースは、誰でもそういうことをされたら嫌だと感じる行為ですから、あまり問題にはなりませんでしたが、ハラスメント一般に、人によって嫌悪するかどうかの個人差があったり、その社会での共通認識や習慣によって感じ方が異なる場合があり、線引きが難しいことが多いのも事実です。
その関係で、昨年話題になりましたが、日本人がラーメンやうどん等の麺類をすする音が外国人に強い嫌悪感を与えるという問題があり、これをヌードルハラスメント、略してヌーハラというそうです。
外国人、特に欧米では、食事の際に音を立てることを嫌い、その嫌悪感は生理的なものまでなっているようです。これに対し、日本人には、麺をすする音がいかにも旨そうに聞こえるようで、落語では、うまくすする音を立てることが所作としての芸になっています。
まさに同じ音に対する反応が真逆ですが、ヌーハラが話題になったときには、日本国内で日本人が麺をすする音にまでとやかく言われる謂われはないという反応が多かったように思います。確かに、その社会のコンセンサスに反していないなら、その音に対する嫌悪感は、個人的な感想にとどまり、違法あるいは不適切なハラスメントということはできません。
また、特にラーメンは、作り手側は、麺をすすって食べることが、そのスープの香りや麺への絡み方、麺自体の食感等として最も美味しく食べられる食べ方だと考えており、その前提でスープや麺を設計しているそうで、外国人が麺をすすらずに箸やフォークで巻くようにして食べているのは、一番美味しい食べ方ではないのに、と残念に思っているそうです。
ヌーハラが長くは議論されなかったのは、こうした理由でしょう。
ただ、セクハラもパワハラも初めは余り問題視されなかったのが、社会の認識の変化により、首がかかるほど違法・不適切なものと変化してきたのです。
日本人も、フレンチレストランでは、スープを飲むときに音を立ててすすることはしない時代になっています。そういうものだという認識が一般化したためですが、ラーメンでも同じようなことになるかもしれません。
ラーメン業界では、昨今は、外国人と女性が極めて大きなウェイトを占めており、東京等でラーメン屋に行列をなしているのも、多くは外国人だそうです。カープにいたバリントンもラーメンフリークでした。
そうすると、ラーメンの作り手側も、営業的に外国人の意識を無視できず、意識高い系の作り手は、外国人が麺をすすらないことを前提にラーメンの設計をすることを既に考え始めているそうです。既にラーメンは国際的な食べ物であり、海外出店しているラーメン店も少なくありませんから、当然と言えば当然です。
日本人でも若い女性はあまり麺を音を立ててすすることはしないようにも見えますから、日本人女性もこの流れに追従すると、下手をすれば、日本人のおっさんだけが取り残されるかも?しれません。
以 上