「お医者さんはしんどい.....(-_-;)-応召義務 パート3」
2018.05.10|甲斐野 正行
平成30年5月7日の報道で、厚生省が4月27日付けで、入院して治療を続ける必要がある患者に対して、身元保証人らがいないことのみを理由に医師が入院を拒否することは医師法19条1項に抵触することを各都道府県に通知したというニュースに接しました。
応召義務パート2で触れましたように、医師法19条1項は、医師の応召義務を定めたもので、これ自体は医師と国との間の公法上の義務で、上記の通知は、この公法上の関係に基づく、国として医師や病院に対しての指導という意味を持ち、身元保証人がいないことだけでは、応召義務を免れる正当事由にはならないということです。
この通知は、内閣府の消費者委員会が平成29年1月にまとめた「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議」を踏まえたものだそうで、成年後見センター・リーガルサポートによる調査の結果によると、身元保証人らがいない場合に入院を「認めない」と回答した病院は全体の2割超を占めたということです。
医師や病院が入院患者について身元保証人を要求するというのは、診療報酬未払案件の増加や、患者に何かあったときの対応に苦慮することが多いこと(例えば、入院患者が亡くなったが、お身内がいないとか、いても遺体の引き取りをしてくれないなど)から、自己防衛としてやむを得ない面があるのですが、それは病院や医師にとっての将来的なリスクの問題であり、それが実現するかどうか分からないのに、入院治療の必要がある患者の入院治療を拒否するというのは確かに問題があるでしょう。
ただ、パート1・2で述べましたように、医師法19条1項の応召義務自体にも問題があるところで、厚生省に対しては、どのような場合に正当事由が認められるのかを、現代の医療事情を踏まえてもう少しきめ細かく検討して指針を明確にすることが望まれますし、応召義務の問題とするなら、その裏表として、診療報酬未払案件や入院患者に何かあったときの対応について病院や医師が困らないフォロー体制も検討してもらいたいところです。
また、病院や医師の側も、これまで入院の場合には当然のように身元保証を求めてきたと思われますが、家族関係が稀薄化し、あるいは、そもそも結婚等をせず単身生活する人が増えている社会状況を前提とすると、身元保証に依存するリスク管理は通用しなくなりつつあることを自覚する必要があります。
さらに、次回に回しますが、身元保証という制度自体、民法の改正もあって、その効力についてはよく考え直す時期が来ています。