「改正債権法拾遺~施行までに整理しておくべきこと①-経過措置その8~法定利率Ⅱ」
2020.02.12|甲斐野 正行
前回見ました「法定利率」のうち、遅延損害金について注意すべきことをもう少し見ていきます。
遅延損害金は債務の「履行遅滞」、つまり債務を期限どおり履行しないことによる責任として発生するものですが、債務によっては、代金や貸金の分割弁済のように、1つの債務の弁済期が一定期間にわたって複数あることがあり、その場合の取扱いをみてみましょう。
1.分割払の場合はどうなる?
例1)令和2年1月1日に大学の友人から100万円を借りて、これを同年2月から毎月末日限り10万円ずつ返済する(便宜上、利息はつけず、約定利率の定めもないということにします。)という約束をしたが、早速2月末の分割弁済分10万円が弁済期に返せなかった場合
施行日前に履行遅滞⇒その元本債権について現行法の適用
↓
①2月末の分割弁済分10万円について、3月1日から現行民法の年5%の遅延損害金がつき、この利率は4月1日以降も同じ年5%になる。
しかも、
②施行日後である4月末の分割弁済分10万円について弁済がなかった場合も、その遅延損害金は現行法の年5%で計算。
例2)例1で、令和2年2月末の分割弁済分10万円が弁済期に返せなかったが、3月末に3月末の分割弁済分と併せて2月末の分割弁済分も弁済し、一旦は不履行を解消したが、その後、4月末に4月末の分割弁済分の弁済ができなかった場合
最初に履行遅滞が生じた時期によるので、施行日前に履行遅滞が生じた以上、その後履行遅滞が解消しても、その元本債権については、その後も現行法が適用
2.分割払と似て非なるもの-賃料
例えば、借家契約に基づく毎月の賃料は、1つの契約に基づくものではありますが、1つの債権の分割払ではなく、毎月毎月の使用に対して個別に発生する債権(支分権といいます。)です。
そのため、賃料債務の不履行は、各月ごとで考え、施行日前の月分の賃料債務の不履行については現行法が適用され、施行日以後の月分の賃料債務の不履行については改正法(年3%)が適用されると解されます。