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弁護士ブログ

「森さんの失言 建国記念の日 津田真道 女性権論」

2021.02.10|甲斐野 正行

 

 森喜朗東京五輪・パラ組織委員会会長の失言問題。

 ご本人は受け狙いで言ったつもりが、その感覚がズレていたために大炎上してしまいました。

 事前の原稿にはないことをアドリブで仰ったようですが、「女性は」と決めつける言い方自体、論理的な意味で通用しないのは当然です。

 また、欧米では、企業活動にも人権に「適切な注意」を払いながら事業に取り組み、取引先を含めた全社的な体制や仕組みづくりを求める「人権デューデリジェンス」の考え方が一般的になってきており、日本企業がグローバル化の中で欧米とスムーズな企業活動をするうえで、このルール作りは非常に重要なものとなっており、近時のパワハラ防止法や個人情報保護法改正もそうした背景があります。

 日本という国自体が人権意識が乏しいというイメージが作られると、企業活動にも支障を来すおそれがあるということです。

 

 森さんは失言について謝罪したからいいじゃないか、森さんは余人をもって代えがたいという擁護論もあり、普段会えばいいおじさんというのも間違いではないのでしょう。

 ただ、東京五輪・パラ組織委員会という、国際的で、「このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。」(オリンピック憲章オリンピズムの根本原則6条)という、まさに人権や平等をスローガンとする組織のトップがこのような女性への偏見をあらわにするというのは、こうした国際環境を考えると、国内だけでなく対外的にも大変まずく、海外のマスメディアが大きく取り上げるのも、むべなるかなです。

 人権デューデリジェンスに真摯に向き合う努力をしている日本企業としても、迷惑な話なのです。

 

 ところで、折しも明日は「建国記念の日」です。

 建国記念の日は、もとは明治政府が、日本書紀に初代の神武天皇が大和の橿原(かしはら)で「辛酉年春正月、庚辰朔」に即位したとあるのを受けて、明治5年に神武天皇即位日を紀元節として祝日にすることを定めたことに由来します。

 この「辛酉年」とは西暦紀元前660年とされ、この年をもって紀元元年とし、日にちについては、当初1月29日とされたのですが、事情もあって、最終的に2月11日とされました。

 

 そして、神武天皇即位を紀元元年とする紀元年を定めることについては、明治2年に当時刑法官権判事(ごんはんじ)の「津田真道」(つだまみち。1829年~1903年)が「集議院」(衆議院ではありません。太政官が提出した議案を審議した議政機関です)に建議したものです。

 

 津田真道については、ご存じない方がほとんどでしょうが、実際にはもっと知られてもいい方だと思います。

 

 岡山は津山藩の出で、江戸で佐久間象山門下となり,幕府の洋学研究機関である蕃書調所に出仕して、西周や榎本武揚らとともにオランダに派遣されライデン大学に留学(法学専攻)、帰国後は,開成所(のち開成学校。東大の前身)教授となり、明治政府にも登用され,日本で最初の西洋法律書「泰西国法論」を出版したほか、陸軍刑法,民法,治罪法の調査に従事し、衆議院副議長なども務めています。

 福澤諭吉や森有礼らと明六社を結成し、明治初期における日本の啓蒙運動にも大きな役割を果たした、我々現代の法律家の偉大な大先輩であり、罪刑法定主義や証拠主義、陪審員制といった欧米モデルの裁判制度を重視し、出版の自由、拷問廃止、死刑廃止など、先進的な見解を展開しています。

 

 そして、津田について特筆すべきは、廃刀令(明治9年)もまだ出ていない、明治8年という時代に、本来の「夫婦の交際」における夫婦とは「同等にして尊卑あることなし」であるとし(「夫婦同権弁」)、娼妓の社会的公認は、風俗の紊乱や人間の品位・徳義にもとるだけでなく、人民の財産の浪費による民間の活力の衰微を招き、外国に対する日本の独立も損なわれるので、人身売買を停止し、娼妓解放令による風俗の改良、貧困の撲滅こそ文明化に近づくことだ(「廃娼論」)とするなど、この時代にして既に女性権について時代を先取りをした革新的な主張をしていたことで、まさに女性権論の先駆け的存在といえます。

 

 たまたま建国記念の日ということで、縁がある津田をご紹介しましたが、津田が亡くなって100年以上経つものの、人権・平等の意識や感覚が根付くには先まだ遠しということでしょうか。
 

以 上

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