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「改正債権法拾遺~施行までに整理しておくべきこと①-経過措置その3」

2019.12.06|甲斐野 正行

引き続いて改正債権法の経過措置です。

 

その1で触れましたように、改正債権法附則34条1項は、「施行日前に贈与、売買、消費貸借(旧法第589条に規定する消費貸借の預託を含む。)、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託又は組合の各契約が締結された場合におけるこれらの契約及びこれらの契約に付随する買戻しその他の特約については、なお従前の例による。」と規定しています。

「なお従前の例による」というのは、改正前の法令が適用されるという意味であることはこれまで見たとおりですから、2020年3月末以前に契約していた場合は、改正債権法ではなく、旧法が適用されます。

 

ただ、これらの典型契約には、契約期間が定めてあり、満期が来ると契約を更新するということがよくあります。すぐ思い浮かぶのは、家の賃貸借契約や、契約社員の雇用契約ですね。

2020年4月1日以降に更新する場合はどうなるのでしょうか?

改正債権法施行日以降の契約として改正債権法が適用されるのか?

それとも施行日前の契約の続きだから旧法が相変わらず適用されるのか?

附則34条1項には明示されてはいません。

 

立法担当者は、当事者の合意により更新する場合は、改正債権法が適用されるとしています(筒井・村松「一問一答 民法(債権関係)改正」383~384p)。

明確な更新の合意がなくても、当事者が異議を述べない限り契約が自動更新されるという約定がある場合の自動更新や、更にそのような約定すらなくても、契約期間満了後も引き続き特に異議もなく使用、雇用が継続しており、黙示的な合意があるとみられる場合も、結局は当事者の意思によるものですから、合意による更新と同様に扱うこととなり、改正債権法が適用されることとされています。

 

これに対し、借地借家法26条による法定更新の場合(つまり、契約に自動更新条項がなく、黙示的な合意があるとも認められない場合)は、当事者の意思に基づかないものであり、契約更新の時点で当事者に新法が適用されることについての期待があるともいい難いから、更新後も旧法が適用される、としています。

 

しかし、借地借家法26条の法定更新は、期間の定め以外は同じ条件で更新されるわけで、合意更新とどれだけ違うのかという気がしますし、法律で定めてあるのに、更新しない旨の通知を所定期間内にしないのも結局は当事者の意思といえなくはなく、外形的には自動更新条項による場合と大差ないようにも見えます。

また、改正債権法では、賃貸借について、旧法ではなかった規定が新設されていますが(①目的物返還義務や不動産賃借権に基づく妨害排除請求権の明文化・改正法601条、605条の4、②民法上の賃借権の存続期間の上限の変更・改正法604条、③賃貸不動産の譲渡に伴う賃借権の移転・改正法605条の2、④賃借人による賃借物の修繕に関する規定の新設・改正法607条の2、⑤転貸借関係の規定の新設・改正法613条3項、⑥敷金に関する規定の新設・改正法622条の2など)、②以外は実務上契約書で通常規定されていた事項や判例法理を明文化したにすぎないですし、法定更新の場合は期限の定めがなくなるのですから、②も考慮する必要がありません。

そうした意味では、改正債権法が適用されても、当事者の予測を害するとまではいえないように思えますし、法律関係の明確化・安定化という政策的な意味では尚更、法定更新と合意更新とを区別して扱う意味はないように思うのですが、どうでしょうか?

 

まあ本音としては、法律を使い分けないといけないので、面倒くさいなあということです。

 

賃貸借契約書のひな型では通常自動更新条項が入っているので、実務的にはそれほど影響はないのかもしれませんが。

 

借地借家法第26条

 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

 

 次回も、もう少し、経過規定を見ていきます。

以 上

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