物品供託はどこでする?
2021.09.13|川崎 智宏
債務を履行したいけども、債権者から履行を拒絶されたり、債権者がどこにいるかわからなかったり、だれが債権者かはわからない時に利用できる弁済供託制度ですが、この制度のうち、金銭、有価証券又は振替国債以外の物品を供託物とする場合の供託(「物品供託」
といいます。)については、法務大臣が当該物品を保管すべき倉庫営業者又は銀行を指定し、これらの者が供託所として供託物たる物品を保管するものとされています。(供託法 5 条 1 項)
つまり、金銭等以外の物を誰かに引き渡す義務を負っている債務者が、受取を拒絶されたり、誰に渡せばいいかわからなかったりする場合、債務者としては物品供託をすることで当該債務を履行することができるのです。
供託法の条文を素直に読めば、他の弁済供託と同じように法務大臣が指定する倉庫営業者又は銀行で手続きをすれば簡単に物品供託が出来そうに思えますが、実際に物品供託をしようとすると簡単にはいきません。
それでは、当職が体験した物品供託をするまでの流れを紹介しましょう。
物品供託をするには、まず、法務大臣が指定する倉庫営業者又は銀行で手続きをする必要があります。ここで注意したいのは、全国津々浦々にある法務局では物品供託に関する業務は行っていないため、法務局に問い合わせをしても法務大臣指定の倉庫営業者を紹介してもらうことしかできません。(ちなみに、法務大臣から指定されている銀行はないようです。)
そのため、物品供託を行う際には各倉庫営業者に対して、具体的な手続きの進め方を確認する必要があります。
法務局から倉庫営業者を紹介してもらっても、まだ、安心はできません。なぜなら、法務大臣の指定を受けている業者であっても供託業務を行っていない業者がほとんどだからです。
当職が倉庫営業者を探した際には、まず、中四国の倉庫営業者を探しましたが、すべて供託業務を行っていなかったので、次に、全国の倉庫営業者の一覧を教えてもらい片っ端から問い合わせを行いました。北海道から山口県まで、30件ほど問い合わせを行いましたが、どこに問い合わせをしても一覧には載っているけど、取り扱いはないとの回答があるばかり、どうしたものかと思っていたところ、唯一名古屋の倉庫営業者から取り扱いがあるとの回答がありました。物品供託に関する書式などは、供託を扱っている書籍にも法務局にも備え付けが無かったので、愛知の倉庫営業者から書式を送付してもらい、やっとのことで、物品供託を行うスタート地点にたどりつけました。
1箇所しかやってないのなら、はじめからそこに問い合わせるので、一覧から外して欲しいですし、法務局でも稼働している倉庫営業者を把握しておいてこっそり教えてくれればいいと思うのですが、物品供託という制度がある以上、全国で1箇所しかできませんということではまずいのでしょう(一覧表に載っているだけとはいえ。)。運良くこのブログの記事にたどりつけた、物品供託をしたいと思っている方は、まず愛知の倉庫営業者から問い合わせをすることをお勧めします。
ちなみに、物品供託について記述がある書籍では、三菱倉庫が倉庫営業者の例としてよくあがっていますが、当職が問い合わせた時点では、供託業務はどの支店でも取り扱いはないとの回答でしたのでご注意ください。
以 上