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弁護士ブログ

「交通事故に遭ったら 弁護士に相談するメリット」その2~適切な後遺障害認定~

2025.03.03|甲斐野 正行

    交通事故で怪我をしても、治療して完全に回復すれば良いのですが、残念ながら何らかの症状が残るケースがあります。
 治療の時期を段階を追って分けますと、怪我が重篤な場合、病院に搬送されて重篤な状態が落ち着くまでの時期を「急性期」、重篤な状態が落ち着いてから状態がこれ以上良くも悪くもならないと判断されるまでを「慢性期」、状態がこれ以上良くも悪くもならないと判断された時期を「症状固定」といいます。
 症状固定時点で、怪我が治って元通りというのが一般にいう「治癒」であり、何らかの症状が残った場合が後遺障害です。
 
◎後遺障害認定の概略
 交通事故の場合、自賠責が相手に付いていたり、自分の方の保険に人身傷害保険などが付いていれば、自賠責の損害保険料率算出機構という組織が提出された資料をもとに1級から14級までの範囲で後遺障害等級を認定してくれますが、軽微であったり、症状を証明する資料がない等の理由で後遺障害として認定されない場合(非該当)もあります。おおよその手続の流れは以下のとおりです。

 ①医師が症状固定と診断
  ↓
 ②医師に後遺障害診断書を書いてもらう
  ↓
 ③加害者側の任意保険会社を介して後遺障害認定の申請をする(「事前認定」といいます)、又は、加害者側の自賠責保険会社を介して申請する(「被害者請求」といいます) 
  ↓
 ④損害保険料率算出機構で書面審査が行われ、結果が通知される

 なお、加害者が自賠責保険を付けていない場合でも、政府補償事業の請求という手続をとれば、事実上、自賠責と同じ手続で後遺障害認定をしてくれます。また、その交通事故が労災事故に当たる場合は、労働基準監督署でも後遺障害認定をしてくれます。

 後遺障害の等級を簡単に説明しますと、1級は常時介護を要し、労働能力も100%喪失したと評価される状態です。2級は、常時とまでは言えないが、随時介護を要し、100%労働能力が喪失したと評価される状態です。3級は、介護の必要性がそこまで高くはないが、労働能力が生涯にわたって100%失われたと評価される状態を意味します。4級以下はその後遺障害の内容や程度に応じて労働能力が一定程度失われたと評価される場合で、4級が92%、5級が79%、6級が67%、7級が56%、8級が45%、9級が35%、10級が27%、11級が20%、12級が14%、13級が9%、14級が5%という労働能力喪失率の評価となる状態とされています。

 ところで、症状がレントゲンやCT・MRI等の画像で客観的に判断できたり、検査で数値化できたりする場合はわかりやすいのですが、そうした客観的資料がない症状の場合は適切な等級を認定してもらうのは困難なことが多いです。
 よく聞く「むち打ち症」は、どこかの神経が傷んでいるのでしょうが、現在の医学ではそれを画像等で明確にすることができず、基本的に本人の主訴によることになるため、認定されても12級か14級というところで、そもそも後遺障害としては非該当とされることが多いでしょう。
 また、例えば高次脳機能障害は、それ自体重篤な後遺障害なのですが、これも症状の有無や程度が外見からは分かりにくいため、やはりその症状に適切な認定を受けられないことが珍しくありません。
 
 そうすると、簡単には分かりにくい後遺障害の症状の場合には、その認定申請に当たって、分かってもらうための工夫・努力が必須です。
 そこで重要なのが、前述した申請手続として、事前認定を選ぶか、被害者請求を選ぶか、ということと、弁護士に依頼するかどうか、ということです。
 
 事前認定では、後遺障害診断書を加害者側の任意保険会社に提出すれば、他の必要資料は保険会社側で集めて審査機関に送ってくれます。
 これは、被害者にとって手間がかからず楽なので、実際にこの手続をとっている方は多いのですが、後遺障害診断書にしか関与しませんし、加害者側の任意保険会社が利害の対立する被害者のためにどこまで十全かつ誠実にやってくれるか分かりませんから、適切な後遺障害認定のために必要十分な情報や資料を審査機関に提供できず、そのため、適切な認定を受けられないリスクがあり、そのリスクが現実化したときには、できることをしなかったという後悔が残ります。

 他方、被害者請求では、必要資料を被害者側ですべて揃えて加害者側の自賠責保険会社に提出し、そこを介して審査機関に必要資料が提出されます。
 これは、被害者側で必要資料をすべて収集することになるので、手間がかかりますが、逆に、被害者側で後遺障害を分かってもらうために必要と考える資料を十分に集めて提出できるため、適切な後遺障害認定を受けられる可能性が高まりますし、少なくともできることをしなかったという後悔はしないでしょう。
 必要な資料を十分に集めることは、医療や法律の専門家ではない被害者本人では難しいでしょうが、そこで、これをカバーするために、弁護士に依頼するメリットがあるのです。
 もちろん、どんな弁護士でもいいというわけではなく、後遺障害認定手続だけでなく、その後遺障害について十分な知識・経験がある弁護士に依頼する必要があります。
 ちなみに、私たちの事務所では、例えば高次脳機能障害の場合、弁護士がお医者さんと面談や書面で、自賠責の認定や裁判において、高次脳機能障害はどのようなポイントが問題となるかをご説明し、それを参考にして検査をしていただいたり診断書・意見書を作成していただいたりしていますし、あるいは、実態をより十分に把握してもらうための資料として、患者さんの家庭、職場、学校での状況について、事故前後の変化をご家族や職場の同僚・上司、学校の先生に整理してもらったものを作成したり、という工夫・努力をしています。こうした工夫や努力は事前認定では期待できないところですから、弁護士に依頼して、被害者請求として、必要十分な資料を提出してもらうというのは大きなメリットといえます。
 そして、これは、次回お話しする、賠償金額に反映します。
 

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