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弁護士ブログ

「交通事故に遭ったら 弁護士に依頼するメリット」その3

2025.03.04|甲斐野 正行

    今回は、弁護士に依頼するメリットとして、賠償金額のお話をしようと思います。
  交通事故に遭った場合、誰しも適切な賠償金額が得られるかどうかが一番気になるところです。

 交通事故で死傷した場合の賠償額を算定するうえでは、低い順に①自賠責保険基準、②任意保険基準、③裁判基準の3つの基準があるといわれます。

 このうち③の裁判基準は、過去の多数の交通事故裁判例を分析して算出された基準で、あり、公益財団法人日弁連交通事故相談センターの「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(赤い本といわれます)で公表されており、交通事故の裁判実務は基本的にこれに基づいて運用されています。したがって、適切な賠償額を算定するために最も望ましい基準といえますし、3つの基準の中で最も高額になります。

 一方、①の自賠責保険基準は、自賠責保険制度が交通事故の被害者に対する最低限の補償を確保するために設けられていることから、以下のとおり枠としての支払限度額がありますし、各枠の中での各費目の支払基準も限定されていて、これによって算定される賠償額は最も小さくなります。
・傷害による損害(治療関係費、文書料、休業損害、傷害慰謝料)
  120万円
・後遺障害による損害(逸失利益、後遺障害慰謝料)
  後遺障害等級に応じて、75万円(14級)~4000万円(1級)
・死亡による損害(葬儀費、逸失利益、被害者および遺族の慰謝料)
  3000万円
 そのため、自賠責保険金では、被害者の損害を必ずしもカバーできるとは限らず、むしろ、そうではないことが多いでしょう。

 これを補うものとして、事故の相手方が契約している任意保険があり、任意保険の補償限度額は、自動車保険を契約する際に対物・対人で「無制限」とすることもできますから、最近は無制限に加入している方が多いと思います。
 ただし、強制加入の自賠責保険と違って、任意保険への加入は正に任意ですし、無制限の任意保険に相手方が加入していたとしても、各保険会社は、各自で基準(②の任意保険基準)を設けており、これによって算定される賠償額は裁判基準よりも相当低額になります。
 被害者がご自身で相手方の任意保険会社と賠償交渉をすると、相手方保険会社は自社の任意保険基準や自賠責基準で算定した額、あるいは更にそれらを下回る額を提示してくるのが通常ですし、そもそも知識・経験において勝る相手方保険会社と交渉すること自体ハードルが高いですから、裁判基準よりも相当低い額で示談してしまうこと(そもそも裁判基準より低いことに気付かないことも)が多いと思われます。
 しかし、弁護士に依頼すれば、知識・経験において相手方保険会社に勝るとも劣ることはありませんし、裁判基準で算定した賠償額を前提に交渉します。相手保険会社としても、弁護士が介入した以上、示談でまとまらなければ裁判になり、その場合は裁判基準での賠償額となるうえ、事故日から年3%の遅延利息や賠償額の1割程度の弁護士費用相当損害金が加算されること(この遅延利息や弁護士費用相当損害金は訴訟前の示談ベースでは入れないことが通例です)が想定され、そうした費用や裁判の手間を考えると、裁判基準で算定した額又はそれに近い額で示談する方向で対応する可能性が高くなります。
 また、算定基準だけの問題ではなく、弁護士に依頼することで、過失割合についてもきちんと主張・交渉をすることができますし、前回お話しした後遺障害等級についても、適正な等級を認定してもらえる可能性が高くなり、これらは賠償額に大きく影響しますから、結局、弁護士に依頼しない場合と比較して、最終的に受け取れる賠償金を増額できる可能性が高まります。

 弁護士に依頼しなくてもよいのでは?とお考えになる理由の1つとして、被害者ご自身が自動車保険に加入しているときは、CMでもよく聞くように、自分の保険会社が示談交渉を代行してくれるので、そのサービスを利用すれば経費もかからなくていいということがあるかもしれません。しかし、その場合の算定基準は、精々任意保険基準となるのが通常ですから、裁判基準よりも相当低額になることは否めません。また、同じ業界の保険会社同士でシビアな交渉がどれだけ期待できるかというところもあるでしょう。そうすると、きちんとした賠償をしてもらいたいという意味では保険会社の示談代行サービスは限界があると思われます。
 もう一つ、弁護士に依頼するのを躊躇する理由としては、やはり費用の問題があると思われます。しかし、それはこれまでご説明したメリットとの比較でどうお考えになるかですし、ご自身が自動車保険に加入しており、弁護士費用特約をつけていれば、300万円の限度でその負担を軽減することができます。その限度額を超えるような事故であれば、それだけ賠償額が高額になったということですから、その費用を上回る成果が得られたことになります。
 また、弁護士費用特約がない場合でも、とりあえず弁護士に相談して、その事件の見通しや、依頼した場合の費用がどうなるのか、足が出るおそれはないのか、などを相談してみられることをお勧めします。相談費用は、30分5500円(税込)程度かかる事務所が多いでしょうが、得られるメリットを考えると高いとはいえないと思いますし、無料で相談に応じてくれるところもあります(当事務所も、交通事故は最初の相談は無料です。)。
 また、弁護士費用は受任段階での着手金と事件が終了したときの報酬金に分かれますが、弁護士費用特約がない場合は、当事務所は着手金はいただかず、事件終了時に得られた額の10%(税別)を報酬金としてお願いするというようにしており、これであれば、費用倒れのリスクは少ないのではないでしょうか。

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