交通事故(事故車について)の話【№2】
2016.12.19|根石 英行
このように事故に遭っただけで評価損は直ぐに認めにくいという理屈を踏まえつつ、実際の裁判所での扱いは、事故の中古価格への影響を全く認めないわけではなく、機能的な面と価格的な面の両方を考慮して処理しているのが裁判所の考え方となっています。具体的に評価損が認められるのは、①登録した時期から期間が短いこと(3年から5年くらいまで)、②走行距離も少ないこと(5~6万キロ程度まで)、③人気車種、高級車であること、④損傷の程度がある程度大きいこと(中古車として売る場合に修復歴を開示しなければならない場合や車のエンジンや骨格など枢要部まで修理が及んだような場合)などの要件を満たした場合に限られます。これらの要件は市場での中古価格への影響という点からも認められるものですが、④の要件は、機能的な損失を重視していること言えるでしょう。①~③の点はある程度総合的に考慮されるものですから、高級外車であれば、登録年数や走行距離がある程度あっても評価損が認められることもあるでしょうし、軽自動車であっても登録から間もなければ、評価損が認められる場合がないとは言えません。④の損傷の程度については、特に修復歴を中古車として販売する際に表示しなければならない場合であるとか、フレームまで損傷が及んでいるとか、損傷の部位や程度が一定のもの以上でなければならないでしょう。
【つづく】