トラ【No.1】
2017.05.02|中井 克洋
うちには15歳になるかわいいネコがいる。名前は「トラ」といい、スコティッシュフォールドの男の子。15歳といえば人間でいうと70歳とも80歳ともいわれるが、まだまだ元気だ。
トラがうちに来てくれたのは平成14年(2002年)2月のことだった。平成13年(2001年)はとても大変な年で、10月に松江で行われた民事介入暴力対島根大会の準備があってとても多忙だっただけでも大変だったが、3月に親友が死去したほか様々な色々なことがあった。
私は小さいころから家に犬や猫がいたが、特に猫が大好きで冬などに寒い布団の中に入ってきてくれたりして、一緒に寝るのが大好きだった。その大変だった平成13年に、何か癒されるものがないかなと思い、ネコを飼いたいと思うようになっていた。
そんななかで年があけた平成14年の1月ころ、間口が2メートルくらいしかないペットショップの前を通りかかるとショーケースの中にトラがいた。
ちっちゃなキジトラのスコティッシュと白いチンチラペルシャの子猫が2匹同じケースのなかにいたが、チンチラの方はいつも寝ていた。それに対してスコティッシュのほうは、私が通るたびにいつも起き上がってはニャーニャーと私に向かって呼びかけてくれた(ように思えた)。その後もその店を通るたびにスコティッシュが呼びかけてくれるので、どんどんこの子を連れて帰りたいという思いが強くなっていった。
しかし問題があった。うちの妻はそれまで一度もペットを飼ったことがなく、また花粉症のアレルギーもひどいので、ネコを飼いたいというと反対するのは目に見えていた。
実際、猫を飼いたいと言うと、最初はとても強く反対された。
でも2月になって、スコティッシュを見に連れて行ったところ、ようやくネコの可愛さを認めてくれて、すぐに連れて帰ろうということになった。2月の寒い夜に紙の箱でできたキャリーバッグに毛布をかけて連れて帰った。とてもうれしかった。お店に聞くと、平成13年(2001年)12月26日に産まれたとのことでまだ生後2か月もたっていなかった。ちなみに私の甥(妹の息子)がその12月25日に産まれで、1日違いだ。
夫婦で家の中でキャリーバッグから解き放つとそのスコティッシュはトコトコとテレビの裏に入っていった。妻は「どうしよう、入って出てこなかったらどうしよう!!」ととても心配したが、小さい頃から猫に慣れている私は「大丈夫、大丈夫」と言ってネコが出てくるのを待った。
30センチくらいの高さのソファに上がろうとしてもよじのぼれないほどのよちよち歩きだった。本当にかわいい子だった。私たちはこのスコティッシュの名前をどうしようかと話し合ったが、うちの妻は「さくら」とかかわいい名前にしようと言った。しかし私は昔から、ネコには「クロ」「フジ」「シロ」との単純な名前がスキだったので、「トラ模様だから『トラ』でいいじゃん」と言い張って、結局「トラ」に決まった。
妻とはともすれば口げんかをすることもあったのが、トラのおかげで明らかにけんかをすることが少なくなった(ような気がする)。まさに子は鎹(かすがい)である。本当にいろんなことがあったが、トラがいたおかげで気持ちが癒されたことは数え切れない。【つづく】