ようやく債権法改正成立
2017.05.26|甲斐野 正行
今日平成29年5月26日に、売買や貸借など契約に関するルール(いわゆる債権法)を約120年ぶりに見直した改正民法が参院本会議で可決され、成立しました。
今回の民法改正は300項目以上に及ぶ大改正で、法案としてまとまるまでに5年以上にわたる相当紆余曲折があり、平成27年3月31日に改正法案がようやく閣議決定されて、同日、第189回国会に提出されたものです。
法案としてまとまった段階では、ある意味かなり妥協的なものとなっていて、さほど揉めずに可決されるという見方も多かったのですが、その後の政治状況の中で、民法改正法案は実質審議がされないまま同年9月に閉会し、継続審議となりました。平成27年秋の国会は召集されていませんので、平成27年は結局審議されないままだったわけです。
そして、昨年11月の第192回国会、衆議院法務委員会で、やっと改正法案が実質審議に入ったものの、その時点で既に会期が押していて、同国会は同年12月17日に閉会となり、またもや継続審議となりました。
閉会中の審査はされていたのですが、審議としては、今国会が召集された今年1月早々にされたわけでもなく、衆議院法務委員会で質疑がされたのは、4月5日になってから。同月12日には早くも実質的な修正もなく改正法案は衆議院法務委員会で可決され、同月14日には衆議院本会議で可決されて参議院に送られました。この辺りは、いわゆる共謀罪法案の審議が長引きそうなので、長い間ほったらかしにしていた民法改正法案を先にやってしまおうというところでしょうか。
そして、4月20日に参議院法務委員会で質疑入りし、5月25日には質疑を終えて同委員会で可決され、今日26日に参議院本会議で可決されたという流れです。
質疑の中身を見ると、債務の保証関連に集中していたようで、120年ぶりの大改正という割には全体としてあまり深い議論がされたとはいえない印象です。さしたる議論もされていないのに、国会提出から2年以上かかったのか、という感じです。
改正民法は、6月に公布され、その公布日から起算して3年以内の政令で定める日(平成32年4月以前)に施行される運びのようです。
民法は明治29年(1896年)に制定されたもので、戦争や戦後の著しい経済変動を経ても、民法それ自体に抜本的な手を加えられることはなく、条文と現実との乖離が生じた場合には、判例で実質的な修正をしたルールが形成されてきました。今改正は、そのような修正ルールを民法の条文に反映させようというものであり、実務的には劇的な変動が生じるわけではありません(だから、後回しにされたというところもあるでしょう。)。
そうはいっても、消滅時効期間や、事業融資の連帯保証手続、業者が多数の顧客に画一的に示す「約款」や、法定利率引下げなど、取引実務的に押さえておくべき論点も多いですから、今後3年間のうちに準備をしておく必要がありますね。
以 上