交通事故(過失相殺)の話【No.3】
2017.06.20|根石 英行
例えば,信号機のない同程度の幅の道路が交差している交差点で,直進車と対向右折車の事故の場合,過失割合は基本的に直進車が2,対向右折車側が8ということになります。本来であれば,直進車に過失があるかどうかは,衝突が避けられたかどうかが厳密に判断されなければなりません。そうするとどこで右折車の右折を発見できたのか,発見したときの距離や双方の速度から,直進車としてはそこでどういう回避措置をとることができたのか,これらの観点から回避措置が不可能であったなら過失はない,ということになります。発見可能な地点で直ちに発見し,ブレーキを踏んでもぶつかっていた,というなら過失はないはず,といえます。しかし,実際裁判において,双方の車の速度や,発見当時の位置を正確に認定することは極めて困難です。事故現場では,衝突したまま車を動かさないことはまれで,渋滞を避けるために,警察が来る前に移動してしまうことの方が多いでしょう。とすると,双方の車が衝突した位置すら特定することは容易ではありません。