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弁護士ブログ

トラのこと

2018.05.22|中井 克洋

1年前(2017年5月)にこのブログに書いたトラが、今年の3月初旬に体調を崩しました。昨年12月に16歳になっても元気だったのに、たまたま用事があって昼に妻が家に帰ったら、大きな声で鳴き叫びながら同じところをぐるぐる回り、瞳孔もゆらゆら揺れていたそうです。

妻は驚いてすぐに動物病院につれて行ったところ、脳梗塞の診断でした。その2週間くらい前にも、ふらふらしてバランスを崩して倒れたことがあったのですが、その時にはすぐに復活しました。病院の診断では「おそらく貧血だろう」ということでしたが、今思うと、それは軽い予兆だったのかもしれません。

今回、私が仕事に一区切りつけて夕方に病院に行った時には血がサラサラになる注射を受けていたところで、かなり興奮していました。体全体からも尿のにおいが強くにおっていました。いつも自分の体を身繕いする綺麗好きなトラが、尿を出しながらゲージのなかでのた打ち回っていたのだと思うと涙がでてきました。麻痺のせいで顔を動かすこともできずにか細い声で鳴いているのを見ると、いよいよお別れかと覚悟しました。

その夜は病院に預けて帰りましたが、いつもはそこにいるトラがいないことがなかなか現実のものと受け止められません。朝、家を出るときにはベッドのうえの私達夫婦の間に作った自分用の枕に寝ていたのに、そこにトラがいないことがどうしても信じられませんでした。

 

次の朝、病院にいくと鎮静剤のおかげで少し落ち着いていました。夕方まで様子をみてもらうと、先生もこれ以上やることはないということで、家で看取るつもりで連れて帰りました。

家に連れて帰ると薬が切れて興奮状態になり、一晩中大きな声で鳴くだけでなく、どんなに止めても立ち上がろうとしました。

左半身の麻痺のため左手足で支えることができなくなり、首も左側に傾き、いくら立とうとしても左側にバタンバタンと倒れてしまいます。トイレに行くこともごはんを食べることもできないのに、何とか自分の力で動こうとするのをみるのは本当につらいものでした。このままだとかわいそうなので、尿の臭いにまみれた体を拭いてやって、家の中に布団や毛布を敷き詰めてやりました。

ただ、口のところにキャットフードを持っていってやると、倒れる前よりもむしろたくさん食べました。また私達が、1時間に1回くらいの頻度でトイレの砂の上に置いてやると何回かに1回は自分でおしっこをしました。

先生に、食べる力が残っていることを相談すると、「ダメなときは食べる力がなくなるものだが、そんなに食べる力があるのなら望みがあるかもしれない。」とのことでした。

私たちはそのようにかすかに希望をもつ一方で、ピンとたっていたしっぽもダランと垂れたままでしたし、両足でふんばれないのでおしっこをしても体につくような状態が続いたので、もうこのまま弱っていくのかなと悲観していた私でした。

ところが何回立ち上がろうとしても立ち上がれなかったトラが、10回に1回は少し立てるようになり、しばらくして次に見た時は10回に2回立ち上がれるようになり、それからも少しずつ少しずつ立ち上がって動ける回数が増えていくようになりました。

そのうち、だらんと垂れ下がっていたしっぽも伸びるようになりました。このまま別れがくるものと私は半分あきらめていたのに、トラの麻痺は少しずつ回復していきました。

1週間もたったときには、トラはなんとかヨロヨロとしながらも歩いて、なんとか自分でトイレや食事に行けるようになりました。

彼は私たちと違ってあきらめませんでした。本能だとはいえ、何度私たちが止めても立ち上がろうとして、実際に立ち上がれるようになりました。

約2ヶ月たった今では、たまによろけるくらいで、なんとか食事やトイレは普通に出来ています。さすがに30センチくらい高さのあるベットに飛び乗ってくることはなくなりましたが、やはり私達夫婦の間で寝るのが嬉しいらしく、ベッドにあげてよと大きな声で鳴きます。しばらく私達の間でゴロゴロのどを鳴らしてなでてもらうと、また自分でヨタヨタとベッドの端に行き、衝撃防止のマットの上にピョンと降りて自分の寝床に帰っていきます。

その寝床は箪笥の一番下段の私の服のすきまです。そこに毛布を敷いて寝させていますが、その箪笥の15センチくらいの高さは乗り越えていけるようになっています。

今回は、絶望や悲観をしないこと、決してあきらめないことが大切であることをトラに教えられました。

おわり

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