職場における悪質クレーム(不当要求、迷惑行為)と働き方改革【№4】
2019.09.02|中井 克洋
2018年2月から3月にかけて、「職場における悪質クレーム(不当要求、迷惑行為)と働き方改革」 【№1】 【№2】 【№3】 というブログを書きましたが、今回はその続編です。
2018年11月20日の朝日新聞に、「悪質クレームから働き手守れ 厚労省、対策指針を策定へ」という表題で
・厚労省が、顧客からの暴言や言いがかりなどの「悪質クレームから働き手を守るため、企業が取り組むべき対策を指針でまとめる方針を労働政策審議会分科会に示した。
・労働組合「UAゼンゼン」のアンケートによると、サービス業組合員3万人のうち7割超が「暴言」などの迷惑行為を受けた。
という内容の記事が載りました。
このUAゼンゼンのアンケートは、2018年2月21日の私のブログでも紹介したものです。
その記事の根拠となったのは、厚労省が2018年12月14日付けで発表した労働政策審議会建議「女性の職業生活における活躍の推進及び職場のハラスメント防止対策等の在り方について」です。
その建議のなかには
(職場のハラスメント防止対策の義務化)
・セクハラ、パワハラ等のハラスメントは労働者の尊厳人格を傷つける許されない行為。企業にとっても経営上の損失。
・職場のパワハラ防止について、事業主に対して、パワハラ防止のための雇用管理上の措置を義務付けることが適当。(筆者注:セクハラ防止は既に男女雇用機会均等法により義務化されています)
(外部からの悪質クレームについて)
・取引先等の労働者等からのパワハラや顧客からの著しい迷惑行為についても、労働者に大きなストレスを与える悪質なものであり、人権侵害になりうる無視できないもの。但し、どこまでが相当の範囲のクレームで、どこからがそれを超えた嫌がらせなのかという判断が自社内のパワハラ以上に難しい。
・自社内のパワハラに類するものとして、相談対応等の望ましい取組を明確化し、関係省庁と連携して周知・啓発を図ることが適当。周知・啓発は指針等で。
との内容が記載されています。
その建議を受けて、2019年5月29日に通常国会において、労働施策総合推進法改正案が可決され、パワハラ対策が事業主に義務付けられました。
同法律では悪質クレーム(カスハラ)対策は義務付けまではされませんでしたが、同法案附帯決議七1には、
パワーハラスメント防止対策に係る指針の策定にあたって、「自社の労働者が取引先、顧客等の第三者から受けたハラスメント及び自社の労働者が取引先に対して行ったハラスメントも雇用管理上の配慮が求められること」も明記されるべきこと
が求められました。
具体的には、2020年春までに
① 取引先に対するハラスメント防止、条件改善の申入れを可能とする
② 外部からのハラスメントに対する専門相談窓口の設置やメンタルケア
③ カスハラを理由とした配置転換を可能とする
④ 飲食店などでのポスター設置による顧客への周知
などを内容とした指針が策定されるのではないか、という報道もされています(2019年2月24日日経新聞)。
今後の動きに注目していきたいと思います。