交通事故(車の損傷にまつわる賠償)の話【No.3】
2016.07.12|根石 英行
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ところで、修理するより安い値段で同じ程度の中古車が買えるから、というのが賠償の基本的な考え方ならば、加害者側で事故に遭ったのと同じ程度の中古車を捜して買ってきてもらって取り替えてほしい、という希望を持つ方もいます。
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しかし、これも民法の考え方にはそぐわないものです。交通事故で被害者が加害者に要求できることは法律では限られていて、それは金銭賠償しかないのです。
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要するに車を直してくれとか、同程度の車に替えてくれとか原状回復を直接加害者に要求することを法律では認めていないので、加害者は被害者にお金を払えばよいし、それ以外のことをする必要はないのです。
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同じことは、加害者に対する謝罪の要求にも言えます。「事故を起こしといて謝りにも来ない」これも被害者として当然のお気持ちですが、裁判所に「加害者が謝りに来ることを求める」と訴えても応えてはくれません。
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交通事故の加害者に謝罪することを民法は求めていないので、法律に書いていないことはできないのです。
なお最近は、加害者が入っている任意保険に特約として「対物超過修理費用」の補償というのが付けられているものがあります。
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被害者の修理費が、時価額超えた場合、修理費と時価額との差額の内の一定額を補償してくれるものです。これは経済的全損が問題になると交渉が長引くことが多いので、それを避ける為に設けられた保険です。
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このような保険に加害者が入っていればよいのですが、入っていなければ被害者側に修理代の手出しという問題が生じてしまうことは避けられないのです。
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- (第一回おわり)