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弁護士ブログ

ペットの慰謝料

2017.06.06|中井 克洋

 

前回、うちにはトラというとても可愛い猫がいて私が溺愛しているという話をしました。

ペットに対しては誰もが強い愛情をもっているものですが、最近、自分が可愛がっていたプードルを動物病院で診てもらったところ、薬の処方を間違われて死んでしまった、何か法的手段を講じることはできないか、という相談を受けました。

そこで今回は、動物に対する愛着がどのように法的に保護されているか、あるいは人間と比べてどのような違いがあるのか、をお話したいと思います。

まず、私のように溺愛している者にとっては人間の子供と同じように思っていますが、ペットは法律的には人ではなく「物」という扱いになります。

例えば、もし他人が飼っているペットをわざと殺してしまえば、刑事事件になった場合、殺人罪(刑法199条)ではなく、器物損壊罪(刑法261条)になります。しかしわざとではなく誤って死なせてしまった場合には、人間のように過失致死罪(刑法210条)のような罰則はないので、刑事事件にはなりません。ですから、相談のような、ペットの医療過誤では刑事責任を問うことはできません。

では民事的にはどうでしょうか。

物を壊した場合、通常はその物の価格を弁償すれば気持ちが慰謝されるとして慰謝料が認められないのが原則です。例えば交通事故で愛着のある古い自動車が壊れた場合に、相手に慰謝料を請求しようとしてもなかなか認められません。かといって古い自動車は価値もほとんどないので、その価格分の賠償請求も満足できるようなものをもらえることは難しいところです。慰謝料も認められにくいので、泣き寝入りのようになることが多くなると思います。

これに対して、同じ物といっても、特別の愛着、深い敬愛、追慕の念などが当然付随することが通常である物については、慰謝料が認められやすくなります。

例えば、ペットショップで買ったのではなく、いわゆる野良の犬や猫をつれて帰って長い間飼っている間に愛着がわいた場合を考えてみましょう。売られているものではないので価格を賠償してもらうのは難しいですが、深い愛着があることが明らかな場合には慰謝料が認められやすくなります。

もちろん人に比べるとその慰謝料は格段に低いです。例えば交通事故などによって人が死亡した場合には2000万円~3000万円の範囲で慰謝料が認められますが、ペットの場合は裁判例などをみても全く認められないものから40万円くらいの慰謝料が認められたものまであります。

大切な存在だったものとの別れは本当につらいものですが、このように、ペットは他の「物」に比べると、慰謝料が発生するという点で、法律的にも飼い主の愛着が大切にされているのです。

以上

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