交通事故(過失相殺)の話【No.4】
2017.07.19|根石 英行
私が前に韓国に旅行した際,乗っていた車が接触事故を起こしたのですが,運転手さんがすぐにダッシュボードから塗料のスプレー缶を取り出し,衝突位置の印を道路につけていました。聞いてみると韓国では接触事故が多く,その場合に備えてスプレー塗料を持っている車が多いとのことでした。
確かにそうでもないと,衝突した位置を特定することは難しいでしょう。さらに交差点の事故では信号の色が問題になることもありますが,衝突した時間が特定できなければ,信号の色も特定できませんが,衝突時間を正確に記録することも容易ではありません。
ドライブレコーダも事故状況の記録には役立ちますが,速度や衝突時間を正確に記録できるものばかりではありません。衝突した位置や時間ですらそういう問題があるので,発見したときの自車や相手車の位置,速度についてもどこまで正確に再現できるか問題があるのです。
そういうことを考えると,コンマ何秒で事故が避けられなかった,という説明を行うことは容易ではありません。すると裁判官としては,過失相殺の基準に従った処理を行う,ということになってしまいがちです。実際の裁判で,前記の過失相殺の基準と異なる内容を主張することは困難ですし,裁判官としても過失割合の基準を前提に双方に解決を迫る,というのが一般的です。
自分の過失に納得できない,という方は結構多いのですが,裁判所で過失がなかったという認定をしてもらうことは結構難しい,ということを踏まえていただければと思います。