「高次脳機能障害、線維筋痛症など-難病と世間の認知度」
2018.01.25|甲斐野 正行
前回のブログで、高次脳機能障害を取り上げましたが、世間では小室さんとKEIKOさんのことで「高次脳機能障害」という言葉を初めて聞いたという人がほとんどだと思います。
交通事故や疾病を扱うことが多い保険会社や保険代理店の方を対象として講演を行うことがありますが、そういう方々でも、高次脳機能障害という言葉自体聞いたことがなかったということが多く、極めて認知度が低い障害です。
しかし、交通事故等による頭部外傷や脳卒中といった脳血管疾患は、誰にでも起こりうるものであり、その場合には後遺症として高次脳機能障害を発症することは普通にあることです。
国立障害者リハビリテーションセンターのサイト(http://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/qa/?_layoutmode=on#ct7-q01)によると、高次脳機能障害者数は、平成13年度から5年間行われた高次脳機能障害支援モデル事業において、すべての年齢層をあわせて全国で約27万人、そのうち18歳以上65歳未満は約7万人と推定されるという報告がありますし、また、平成20年に東京都で実施された調査によれば、東京都内の高次脳機能障害者数は49,508人と推定され、これから推して全国の高次脳機能障害者数は約50万人となるという報告もあります。
例えば、全国のがん患者の総数は厚生労働省「平成20年患者調査」によると、151.8万人で、部位別で最も多い大腸がんでは23.5万人、胃がんでは21.3万人ということですから、高次脳機能障害が、認知度は低くても、その実数として決して少ないものではないことが分かります(がんとの比較は、私も、このブログを書いていて初めて知りました(-_-;))。
弁護士という仕事をしていると、世間で認知度の低い難病に出会うことが多く、その都度、その難病の患者さんご本人やご家族の苦悩の重要な一つが、世間で理解されずに放置されていることにあると気づきます。
「パーキンソン病」(私の母も罹患してました)や「線維筋痛症」という疾患もその一つです。
線維筋痛症は、身体の広範囲にわたって慢性的に痛みが起こる病気で、全国で200万人以上の患者がいると推定されている病気ですが、どういう原因や仕組みで発症するのかがいまだによく分かっていません。
パーキンソン病の方は、脳のドーパミンという物質が出にくくなるために神経細胞の連絡がうまくいかず、震え、動作緩慢、筋強剛(筋固縮)、転びやすいなどの運動症状を起こす病気で、これもドーパミンが出にくくなる原因ははっきりとはしていません。通常は50歳以上で起こる病気で、1000人に1~1.5人という割合ですが、日本の高齢化に伴って実数は増えています。
線維筋痛症もパーキンソン病もいずれも難病指定されており、患者数も無視できない数にのぼりますが、社会的な認知度は高いとはいえず、支援も十分とはいえません。
高次脳機能障害も平成13年度に支援モデル事業が開始されるなど、それなりに認知されるまでに患者さんやご家族、医療関係者その他の長いご苦労があったわけですが、個人の力で認知度を上げ理解を求めることはなかなか難しいものです。
最近では、歌手のガガさんが線維筋痛症に罹患したことを公表して話題になりましたし、もう少し前では、ボクサーのモハメド・アリさんや俳優のマイケル・J・フォックスさんがパーキンソン病に罹患しそれを公表したことで世間で知られるようになったかと思います。
その意味では小室さんやKEIKOさんには申し訳ないのですが、今回のことで高次脳機能障害に対する世間の認知度や理解が進むとよいのですが。