特殊詐欺~被害者の心を深く傷つける犯罪~③
2018.09.06|中井 克洋
なぜか目の前にいる銀行や宅急便の人よりも、
会ったこともない犯人たちの言うことを信じてしまうのです。
それは不安な気持ちに付け込まれて、半分は疑いながらも、
本当であってほしい、という気持ちが強いからのようです。
そういう意味でマインドコントロールにかかっているのですが、
いったん、ひっかかってしまうと、お金を増やしたいと思っている人は
嘘だと思いたくないし、どんどん被害額を増やしてしまいます。
そのうち、どこかの時点で、いつまでもお金が手元に入らないまま、
犯人たちとの連絡がつかなくなって、はじめて
自分が詐欺にあったことを実感します。
詐欺に遭ったことを知るというよりも、「そうかもしれない」と
疑っていたことを「本当だったのか」と認めざるを得ない状況に
なったというのが実態のようです。
そのとき被害者の人たちは、半分疑っていたのに
それでも騙された自分を責めてしまいます。
怒られたり、ばかにされることを心配して、
被害に遭ったことを周りの人に打ち明けることがなかなかできないようです。
警察に届けても、子どもには知られないようにしてほしい、と言います。
ですから、周りに知られたくないという被害者も多いはずなので、
警察に明るみになった被害額は平成29年は390億円ですが、
実際にはまだまだ被害があると思います。
被害者の人たちは自分を責めますが、
自殺まで考えたという人もまれではありません。
つまり特殊詐欺とは、人の不安につけこんで
多額の財産を奪い去るだけでなく、
被害者の心を深く傷つけるひどい犯罪なのです。
続く